前回は、音程と度数について学習しました。今回はスケールについて学びますが、スケールを理解するためには音程の知識が必要になります!
最初に少しだけおさらいしますが、音程の知識に不安がある人、音程について知らない人は、ぜひ前回の記事をチェックしてみてくださいね!
一般的にスケールとは、「ものさし・定規」といった意味で用いられる言葉です。音楽におけるスケールとは、定規のように音の目盛りが整列した状態あるいはそのものを指します。
音の高い順、あるいは、低い順に整列しているので、音の階段だと解釈するのもいいと思います。
和名では音階と表すので、こちらの方がイメージをもちやすいかもしれませんね。どちらの呼び方で覚えてもいいですが、規則的な音の並びをもつのがスケール(音階)と覚えてください。
今回はスケールについて、詳しく解説していきます!
スケールについて学ぶことで、音楽に対する理解を深めることや、演奏の表現幅を広げることにつながります。
やや複雑なテーマでもありますので、繰り返し読んでいただけると嬉しいです。
用語の復習
本編に入る前に、軽く前回のおさらいをしましょう。
音程
2つの音の隔たりのことをいいます。音程には、全音程(全音)と半音程(半音)があります。(※正確には微分音というのもあります。)
半音を1つと数えると、全音は半音2つ分の音程です。ギターのフレットで表すと、半音は1フレット、全音は2フレット分です。
度数
音程を測る単位です。基準の音から「1度、2度・・・(1st,2nd・・・)」と数えます。音程を正確に(全音半音の違いを明確に)表すため、度数の数字の前に「完全、長短、増減」という言葉をつけて呼び分けをします。
今回の内容に度数は登場しませんが、音程は度々登場しています。
音程については、上記内容を最低限押さえたうえで本編を読んでいただくことをおすすめします!
スケールとは
まずは、用語の理解から入りましょう!
教科書的な説明をすると、スケールとは、音の高い順あるいは低い順に並べた音の列のことをいいます。音階ともいいます。
・・・といっても、あまりピンとこないですよね。
具体例を出して、もう少し噛み砕いた説明をします!お馴染みの「ドレミファソラシド」を例にしましょう。
「ドレミファソラシド」もスケールのひとつなのですが、スケールとはこのような規則的な音の並びをイメージしてもらえればと思います。(とりあえず感覚的に分かってもらえればOKです!)
「ドレミファソラシド」に含まれるド・レ・ミなどの音は、基準となる音程によって選ばれています。無作為に選ばれた音ではないということですね。
ここで、規則的な音の並びをもつスケールは定規、基準となる音程は定規の目盛り、と置き換えてイメージしてください。
一本線を引いてこの線が音の集まりだとしたら、音程という定規の目盛りに合わせて線の上に点を打っていく、この点1つ1つがスケールに含まれる音というわけです。
気づいた方もいると思いますが、このイメージってそのままギターの構造に落とし込まれていますよね!線=弦、定規の目盛り=フレット、点=フレットの位置で押さえた音などです。
「ドレミファソラシド」の場合は、“低いド”から“高いド”までが、全全半全全半(全:全音、半:半音)という目盛り(音程)の位置で点を打つスケールです。目盛りの位置をどこに設定しているかでスケールの種類が変わります。
このように基準となる音程が決まっていて、それによって選ばれた音で構成されたものがスケールというわけです。
また、目盛りの範囲、つまり音の範囲(音域)は基本的に1オクターブ以内と決まっています。1オクターブとは「“低いド”から“高いド”まで」のように、基準の音から次の同じ音までの範囲を指します。
ギターでは0フレットから12フレットまでの音のことです。
1オクターブを音程(半音程)によって分解すると、13個の音の集まりになります(0フレットから12フレットまでの音数なので13ですよね!)。
そのうち始めの音と最後の音は、“低いド”と“高いド”の関係のように高さの違う同じ名前の音なので、音の種類でいうと12個の音の集まりということになります。スケールはこの12個(種類)の音の中から選ばれた音で構成されているというわけです!
ちなみに、音の数には基本的に制約がありません!
「ドレミファソラシド」のように7個の音を用いる場合もありますし、半音階といって半音ずつ音をとることで生まれる最大12個のスケールもあります。ギターをやっていると一度は耳にしたことがある、ペンタ(ペンタトニック・スケール)は、5個の音を用いるスケールです。
また、スケールの始めの音にも決まりはありません。12個の音の中なら、どの音を始めの音にしても構いません。
“ド”の音を始めの音とした「ドレミファソラシド」を紹介しましたが、例えば、“ソ”の音を始めとして全全半全全半という音程に基づいた「ソラシドレミファ♯ソ」というスケールもあります。
この辺りの話は今後、調(キー)についての記事で詳しく取り扱います!
話が広がってしまったので、一旦、まとめをして次に移りましょう!
POINT
スケールとは・・・
- 基準となる音程によって選ばれた、規則的な音の並び
- 音域は1オクターブ以内
- 選ぶ音の数には制約がない
- 12個の音の中なら、どの音を始めの音にしてもよい
スケールの効果
さて、スケールの概要はおよそ分かっていただいたのではないかと思います。
しかし、「だからなんだ!」と思っている人も一定数いることでしょう。
スケールがもつ効果を知ることで、スケールについての理解や興味が湧くと思いますので、一緒にみていきましょう!
先ほど、スケールは基準となる音程によって選ばれた音の並び、という話をしました。
実は、この「基準となる音程によって選ばれた」というのが、スケールの音たちに規則性やまとまりをもたらしています。
・・・ん?どういうこと?となりますよね。
「ドレミファソラシド」を再度思い浮かべてください。どことなくまとまった印象を受けないでしょうか?少なくとも音が散らかっているような、カオスな印象は受けませんよね!
スケールは、基準となる音程によって選ばれた音を採用しているからこそ、こういった音のまとまりを得ることができるのです。
また、スケール内の音を使っていれば、ある程度音のまとまりを感じることができます。
実際の楽曲ではほとんどの場合、何かしらのスケールに基づいている(スケール内の音を使っている)のですが、曲中多くの音を使っているのにも関わらず、楽曲に一定の音のまとまりを感じることができるのは、スケールの効果といえるでしょう。
それだけでなく、どのスケールを使うかで楽曲の印象というのが変わります。
明るさ・暗さ、民族性など。ネット上で「〇〇(楽曲)を明るくしてみた」、「△△(楽曲)を悲劇的にしてみた」など、元の楽曲をアレンジした動画が人気があったりしますが、ああいったアレンジも往々にしてスケールを変化させることで印象を操作している場合が多いですね。
スケール内の音のキャラクター
ここまで読んできた方、あるいはスケールの基礎知識が多少ある方は、「スケールって音が一列に順番に並んでいなければならないもの」という印象をどことなく持っているのではないかと個人的に感じています。
確かにスケールは音の並びですが、実際の楽曲ではスケール内の音は順番がバラバラに使われます。しかし、スケールがもつまとまり感を得られることが多いでしょう。
それはなぜか、スケール内の各音にキャラクターがあるからです。小説や映画に配役があるように、音もスケールによってキャラクターが決まるのです。
例えば、主役、主役と対になるキャラクター、主役を引き立たせるキャラクターなど。
スケールが物語だとすると、スケール内の音たちはその物語の登場人物です。配役された音たちがそのキャラクターを演じることで、スケールという物語がひとつのお話としてきちんとまとまるのです。
スケールが決まると、おのずとスケール内で登場する音の配役が決まります。当然、スケールが異なれば、登場する音も配役も異なります。
配役は、相対的な音の高さの関係によって決まります。あるスケールでは主役だった音が、あるスケールでは主役を引き立たせるキャラクターになったりするのです。
例えば、「ドレミファソラシド」の場合は、主役となる音は最初と最後の“ド”の音です。“ド”と対になるのは5番目の音の“ソ”、主役を引き立たせるのは7番目の音の“シ”などです。
他にも、“ド”とキャラクターが似た6番目の“ラ”や、“ド”と相性の良い4番目の“ファ”など、スケール内でのキャラクターづけがそれぞれあります。
これが同じ音で構成される「ラシドレミファソラ」という別のスケールの場合は、主役が最初と最後の音“ラ”、さっき主役だった“ド”は3番目の音となり主役から離れます。他の音も音の順番が変化することでキャラクターも変化していくのです。
スケール内のどの音がどういうキャラクターをしているかはまた追々解説します!
このように各音のキャラクターはスケールの種類によって異なります。同じ音でもスケールが変わればキャラクターも変わるのは、相対的な音の高さの関係(スケール内の何番目の音になるか)によって私たちの音に対する認識が変化するからです。
実際の楽曲は、この音のキャラクターを意識して作られています。多くの場合、スケールに慣れてくると、頭でどうこう考えなくても、音のキャラクターを直感的にイメージして曲を作ったり、演奏したりすることができます。
スケールの最初の音は主役のような安定感があるから、フレーズの最初と最後にもってこよう!と感覚的に分かってくるようになります。
一方、音のキャラクターを無視して作曲や演奏をしてしまうと、たとえスケール内の音を使っていたとしても、なんだかちぐはぐな印象を与えてしまうことがあります。
例えば、「最後、ここで締めたい!」という場面で主役を引き立たせる、7番目の“シ”をもってきてしまうと、主役の“ド”の音待ち状態で締まりが悪いことになってしまいます。
スケール内の音のキャラクターについては、知識や経験の積み重ねで徐々に分かってきます。
記事の後半では、スケールの代表例をいくつかピックアップして紹介します。スケール内の音のキャラクターについても少し触れていますので、まずはここから少しずつ慣れていってくださいね!
スケールのキャラクター
先ほど、スケールを物語、スケール内の音を物語の登場人物に例えて解説をしました。ここでは、スケール内の音にそれぞれキャラクターがあるように、スケール自体にもキャラクターがあることに触れたいと思います。
小説や映画のような物語にはそれぞれジャンルやカテゴリーがありますよね。実は、スケールにもそのようなもの(ここでは分かりやすくキャラクターと置き換えましょう)があります。
「スケールの効果」で、どのスケールを使うかで楽曲の印象が変わると説明しましたが、これはスケールのキャラクターが反映されている結果ともいえます。
例えば、楽曲を聴いたとき、「全体的に明るい(暗い)感じがするな」、「アジアンテイストな雰囲気だな」などと感じるのは、スケールのキャラクターが反映されている場合が多いです。
スケールのキャラクターは、スケール内の音の働きによって形成されます。スケール内の音がそれぞれ配役に従いキャラクターを発揮したとき、全体でみるとスケールのキャラクターとして認知することができるというわけですね!
スポーツに置き換えるとイメージしやすいと思うのですが、例えば、個性豊かな選手が揃ったチームでも、チームとしてひとつにまとまるとチームの特色が感じられますよね。
同じようにスケールでもキャラが立った音が集まったとき、音の集まりとしてまたひとつのキャラクターを形成するというわけです。
次に具体的なスケールをピックアップして、スケールのキャラクターも記載していますので参考にしてみてください。
いろいろなスケール
スケールには多くの種類があり、それらを一度に覚えようとするのはとても困難です。ここでは代表的なものを3つだけ紹介します。この3つのスケールはとても重要なのでぜひ押さえておいてください!
それぞれのスケールの一般的によくいわれる音のキャラクターも併せて書いておきますので、これまでの内容を振り返りながら読んでみてください!
覚えるというより、まずは見慣れるところから始めていきましょう!
01. メジャー・スケール
- ドレミ表記:ドレミファソラシド
- 音程:全全半全全半
- スケールのキャラクター:明るい、陽気、軽やかなど
- スケール内の音のキャラクター:1番目のドが主役、5番目のソが主役と対となる役、7番目のシが主役を引き立たせる役など
度々例に出している「ドレミファソラシド」はメジャー・スケールと呼ばれています。最もポピュラーで馴染みのあるスケールですね!一般的に明るい、陽気、軽やかなどの印象を与えるスケールだと言われています。
02. マイナー・スケール
- ドレミ表記:ラシドレミファソラ
- 音程:全半全全半全
- スケールのキャラクター:暗い、悲しい、重い
- スケール内の音のキャラクター:1番目のラが主役、5番目のミが主役と対となる役、7番目のソが主役を引き立たせる役(※)
マイナー・スケールは一般的に暗い、悲しい、重いなどの印象を与えるスケールだと言われています。ネガティブなイメージばかり上げましたが、これはあくまでメジャー・スケールと比べたときに一般的に持たれやすい印象で、実際の楽曲ではエモーショナルな雰囲気やクールな印象を与えることもあります。
また、マイナー・スケールはその中でも3つのスケールに細分されます。基本形は上記のスケールで、これはナチュラル・マイナー・スケールと呼ばれます。
LEVEL UP!
3つのマイナー・スケールについてもざっとみていきましょう!
01. ナチュラル・マイナー・スケール
上記のスケール。基本形。
02. ハーモニック・マイナー・スケール
ナチュラル・マイナー・スケールの7番目の音を半音上げたスケール。
ナチュラル・マイナー・スケールでは、7番目のソと8番目の主役の音であるラの音に全音の開きがあって、(※)ソには主役を引き立たせる力が弱くなっています。そこでソを半音上げることでソ♯にして、ラに半音で迫る音程をとることができます。
結果、これで7番目の音の主役を引き立たせる力を強めることができるのです。この辺りの話はコード進行を考える上で大事な内容になります。
03. メロディック・マイナー・スケール
ハーモニック・マイナー・スケールの6番目の音を半音上げたスケール。
ハーモニック・マイナー・スケールでは7番目の音を半音上げましたが、その結果、今度は6番目のファと7番目のソ♯の間に全音1つと半音1つ分という大きな間隔が開いてしまいます。
こうなると、ハーモニック・マイナー・スケールでメロディーを作ろうとしたとき、音程の開きが大きいため滑らかに音を繋げることが難しくなります。
それを解消するために6番目のファも半音上げてファ♯にします。そうすることでミ⇆ファ♯⇆ソ♯の相互間が全音程に収まるので、メロディーの滑らかさの問題が解消されるというわけです。
上記どのスケールを使うかは楽曲の傾向や使用箇所(メロディーや伴奏など)によって使い分けがさまざまです。
02. ペンタトニック・スケール
もうひとつ、ギターをやる上でほぼ避けては通れないのがペンタトニック・スケールです。
ペンタトニック・スケールとは上記2つのスケールとは違い、5つ(5種類)の音で構成されるスケールです。(ペンタとはギリシャ語で“5”を意味します。)
多くの名曲のメロディーやギターのアドリブなどで使用されてるスケールです。民族音楽(例えば、琉球音楽)で使用されるケースも多いです。
ペンタトニック・スケールには2種類あります。
メジャー・スケールの派生ともいえるメジャー・ペンタトニック・スケール(4・7番目の音がない/ドレミ表記:ドレミソラド)、ナチュラル・マイナー・スケールの派生ともいえるマイナー・ペンタトニック・スケール(2・6番目の音がない/ドレミ表記:ラドレミドラ)の2つです。
どちらのスケールも半音で迫る音程を持たないので、各音程移動が滑らかに、音選びが容易に(下手なメロディーになりにくく)なります。また、ギターの運指(各弦の各ポジションを押さえていくこと)が楽であることもあって、アドリブなどで重宝されるスケールです!
実は、スケールにはまだ他にもたくさんの種類があります!数が多いと覚えるのにげんなりしますよね・・・
でも、KGA音楽理論初級編では、ひとまずそんなにたくさん取り扱わないので安心してください!少しずつ覚えていくようにしましょう!
まとめ
いかがでしたでしょうか?少し詳しく解説したので情報量が多いと感じた方もいらっしゃるかもしれません。
はじめのうちは音程とスケールの概要が分かればいいと思います。音のキャラクターやスケールの種類などについては追々知っていきましょう!
本文中の、「全音、半音」、「〇番目の音」、この辺りの内容が分からなかった方は、前回の「音程と度数」の記事を読み、疑問を解消してみてください。
次回は、メジャーとマイナーについて解説します。この記事ではメジャー・スケールは明るくて、マイナー・スケールは暗いとざっくりとした紹介をしましたが、次回、この辺りの話をもう少し深く掘り下げて解説していきたいと思います。
〇×クイズ
最後に〇×クイズを用意しましたので、ここまでの学習の確認でぜひトライしてみてください!正解はコメント欄にあります。
第1問 スケール内の音程はどのスケールも同じである 〇か×か
第2問 どのスケールを使うかで楽曲の印象というのが変わる 〇か×か
第3問 マイナー・スケールはさらに3つのスケールに細分される 〇か×か
第4問 ペンタトニック・スケールは7つの音で構成されたスケールだ 〇か×か
第5問 スケールはメジャー・スケールとマイナー・スケールの2種類しかない 〇か×か
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